2015年4月9日
アクロス福岡 シンフォニーホールで行なわれたブライアン・ワイス博士の「奇跡が起こる前世療法」
精神科医のM氏が感想を寄せてくださいました♪
講演会は初心者向け、七百名以上の聴衆向けの宣伝であり、ガイドラインの概略であったため、博士の前世療法がいかなるものか、不明であった。「無宗教の日本人」を軽くあしらうような中身が無い講演会であった。実際に大勢の観客が誘導に乗り、前世のイメージを体験したようだ。
1。初心者が前世の意識を感じとるには、自己意識統一、瞑想の修練が不可欠である。視覚瞑想法で目の前のリンゴに意識を集中する、聴覚瞑想法で静かな音楽に意識を向ける。集中が深まると対象である果物がクルリと踊る、聴覚で感じとる世界が周りの空間から広大な宇宙に広がる、などを体験する。脳の側頭葉の制御が鎮まり「今、ここにいる」意識から離れる。潜勢力である潜在意識や胎内意識、前世意識が現れる。
しかし、博士の催眠誘導は階段、ドア、庭園、真珠をイメージさせる。イメージからスタートするため、客体と主体が融合していく過程が欠落しており、瞑想が深まらない。
柿木教授の論文『瞑想中は痛みを感じないというヨガの達人』で引用されているように、Rainville(1999)他によると、催眠状態の脳は後頭優位でデルタ脳波が増加し、脳血流変化が起きている。意識レベルの低下と視覚心象=イメージが促進される催眠状態の脳は、瞑想時とは異なるのだという。このことからも、催眠誘導は瞑想に不適切と言える。心や魂が傷ついた人は混濁意識の影響を相当に受けるだろう。
2。対話は実在である魂と行うものだ。博士は、痛む肩など不調の箇所に向けて対話するという。不調をきたす混濁意識に振り回された考え方だろう。意識を感じとり癒す力があるヒーラーの指導と、本人が魂と対話するためクンダリニーヨガの実修が、より客観的な癒しに必要である。
3。博士が別人格へアプローチする際の語りかけは、解離性人格障害へのアプローチの域を出ない。「あなたは誰」「あなたがいると、この人にどのような感情が起こるか」「この人があなたにできることは何か」。別人格の存在を否定せずその主張を聞き取り、別人格の感情を和らげて現れなくなるのを待つだけだ。チャネリングや自動書記による客観的な因果の分析を行い、傷ついた魂よりも高次な認識力を持つヒーラーの指導の元で対話する必要がある。
博士は、臨床の場で現れた患者の前世意識または患者に憑依した意識を否定せず、存在を広く知らしめた。しかし、クンダリニーヨガマスターの如く卓越した指導者とは違い、その現象に話し相手として対応するに止まっている。
巷のヒプノセラピー体験談を聞くと、一回目のセラピーで母胎内体験をしたが、それ以降何も意識が出てこないなど限定的な体験談は多い。表出した潜在意識に、セラピストが関わり、その都度対処しているのだろう。スピリチュアルな体験への対処方法が求められているのは確かだ。
継続してクンダリニーヨガを実修し、自己変革、自己実現、人間完成を目指す体系的なプログラムである川上メソッドは、優れたモデルとなるだろう。